第2話

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「どのランチにした?」 おじさん……いや桐谷さんのお父さんが何事もないようなトーンで聞いてくる。 「もういいから、あっちに行けば?」 追い払おうとする桐谷さんだったが、バレたので開き直ってしまったのか、テンポを上げて話をしてくる。 「私の事はノブちゃんと呼んでくれたらいいから」 「――メイちゃん行こう」 手を掴まれて急に店を出る事になったが、桐谷さんのお父さんがあんなにお茶目な感じだとは意外だった。 「昨日も父が来るとは思わなくて、姿見えたからすぐ引き上げたんだけど。正直あの感じウザいでしょ?」 「えっ、私はお茶目で親近感湧いていいと思ったんだけど……」と答えると少し驚いた様子だった。 「今日も少し買い物付き合ってもらっていい?」 「勿論です!」 最近はメンズの店舗に入るのも少し楽しみになっていた。 桐谷さんが行くお店は素敵な店が多いので、素材を触ったりディスプレイを見るのも参考になる。 今日はトップスとボトムとハット等を買い店を後にした。 「メイちゃんは何か見る物ないの?」 「では、ちょっと靴見てもいいですか?」 いつも行く靴屋さんが近かったので、ついでに寄ってみようと閃いた。 展示会やヘルプの出張も無事に終え、自分へのご褒美も見ておきたい。 「もちろん、いいよ」 桐谷さんも隣に並び、レディスの靴屋さんに一緒に入る。 大体欲しい物は決まっているので試しに履いてみる事にし、王道のオックスフォードとパンプスを履き比べた。 パンプスは購入予定ではなかったけど、レースの透かしになっていて、色もベージュなので肌なじみもいいし、つい履いてみたくなったのだ。
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