第2話

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「う……ん、どっちにしようかな」 少し悩んだけど今回は目的の物を優先させる事にし、近くにいた店員さんにオックスフォードシューズを渡した。 「――早っ!女性の買い物ってもっと時間かかると思ってた……しかも全く相談なし」と、笑いながら言われてしまう。 「私、買わない時はお店に入らないし、大体イメージ決めてるんで」と話していると、桐谷さんはもう一足のレースパンプスをレジに持って行く。 「ちょっ、あの……」 慌てて追いかけたが、これと二足お願いしますと会計を済ませてしまっている。 そのままお店を出てしまうので、驚きと申し訳ない気持ちで払いますと伝えたが『両方とも似合ってたから』という理由で却下。 機嫌が良さそうに満面の笑みを浮かべていた。 「え、でも……」 私も社会人だしこういうのも慣れてないし、落ち着かない表情で桐谷さんに目をやる。 「こういうのしてみたかったんだよね」と嬉しそうだ。 「じゃ、じゃあお茶は私が……」 何とか罪悪感を減らそうとしたが、俺にはそんな気遣い不要だからで終わってしまった。 並んで歩いていると「あの店……女性に人気だよね?」と、桐生さんが指をさしたのはアクセサリー屋さんだ。 「はい、確かに人気です」 私も好きなのでたまに来るが、ファッション誌にも載っていてリーズナブルな物から少しラグジュアリーなクラスまで幅広く扱っている。 「参考で入ってみたいけど、直ぐに接客につかれちゃうんだよね」 「でしょうね、男性が一人だとプレゼントかなって店員さん期待するでしょうから一緒に入ってみます?」 「いいの?じゃあ悩んでる感じで色々出してみてもらっていい?」 桐谷さんもノリノリな感じになってきて、気になるデザインがあれば合図してもらうよう事前に作戦を立ててから店内に入った。 路面のアクセサリー店は入りにくい感じがするが、人気のお店だけあって平日でも女性やカップルが結構入っている。 私はよく鈴と来て、可愛いのがあればたまにお揃いになったりしている。 意外と人がいるのでガラスケースをゆっくり見る事が出来たが、桐生さんの目が少し真剣になっているので声を掛けづらい。 ここは大好きな華奢なアクセサリーはもちろん、大ぶりなデザインやバッグ等の小物、腕時計も扱っている。
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