第3話

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「これ……食べたいんですか?」 「うん、いい臭いしてるし」 確かにいい臭いだけど、そんな鍋を見つめなくてもと言おうとすると「三杯位にしょうかな」と呟くので慌てて手を振った。 「いや、ルーがこぼれるし持って帰るの大変ですよ。しかも沢山食べるなら作った方が安上がりだと思います」 思わず言ってしまった直後、彼の目が光ったよう……に見えてしまう。 「じゃあ、作って」 「えっ?今日はもう遅いんで、作るとしたら短時間で出来るキーマカレーぐらいですかね」 嬉しそうに頷く桐谷さんはテンションが上がっているので、急遽自宅に残った材料を聞き、少し買い足しをしてスーパーを後にした。 駐車場で『朝送るから準備してそのままウチに来ない』と提案され、お言葉に甘える事にした。 まず私のマンションに着くと泊まる準備の為、マンションの階段を駆け上がる。 出張で慣れているからか荷物を入れるのが早い気がしていて、ついでに服も着替えて車に戻った。 「言ってみるもんだな、キーマカレー食べれるって思ってなかった」 「そんなに凝ったもの作れないですけどね……」 一人暮らしをしていると、材料が余るのでコンビニで弁当を選んでしまうが料理は嫌いではない。 それこそ『食べてくれる人がいれば』作りたい位だ。 あとは味の好みが合えば作りやすいが、そこは人それぞれなので微妙な所だ。 「あ、桐谷さん辛さってどれくらいが好みなんですか?」 「甘口と中からの中間くらいかな」 辛いのが得意ではないので、桐谷さんも同じぐらいだと味の好みが近い気がして嬉しくなる。 外で食べるカレーは辛すぎる物が多く苦手なので、実家で食べるか少量を作るか、どちらかの選択になる。 だた、カレーでそんなにテンション上がると言われると私はそうでもないので、隣をチラッと見ると桐谷さんは満面の笑みを浮かべている。 門が開き入り口からは木がお出迎えするように両端に並んでいた。 ――桐谷さんの自宅訪問二回目。 「お邪魔します……」 玄関を入りリビング横のカウンターキッチンに向かうと、買って来た物を冷蔵庫に入れていく。 材料等は殆ど入っていないが、バターや卵、牛乳等は揃っていた。 桐谷さん料理するのかなと思ったのは、カウンターキッチンの下の扉を開けると、フライパンや鍋新品の調味料がぎっしり詰まっていたから。
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