第3話

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「ううん、我慢……します」とその場を離れた。 二階はメンズ商品が少しあり、隣にバッグ等の小物が置いてあるので、それを目的に奥に進んだ。 綺麗めでカッチリした小さめバッグが欲しかったが、候補が何点かあり鏡の前で合わせてみる。 どれも可愛いなと一旦バッグを置いて辺りを見ると、鈴はメンズの服を見ているようだ。 「プレゼント?」 「いや、ちょっと見てみよっかなって」 メンズコーナーにも男性客が結構来ていたが、中にはスーツ姿の人もいるので、これはメーカーさんかなと勝手に想像していた。 「メイは何かいいのあった?」 「バッグが何点かあったけど一応他も見る」 一応全部を見たうえで判断したかったので、一旦保留にして上の階に上がる。 三階はパンツ類が多く小物やアクセも、先程とは違うテイストの物が沢山あり目が輝くがここにも結構人がいるので、隅でこっそりと見る事にした。 少し離れた所には飲み物が飲めるコーナーもある。 「ちょっと休憩する?」 歳のせいか休憩時間は必ず必要な30代は仲良くコーナーに向かった。 ブラッドオレンジジュースをもらい、飲みながら気になっているバッグの話をしているとトントンと肩を叩かれた。 振り返るとニットキャップにオシャレ眼鏡、シャツにベストで細身のパンツ姿の男性が立っている。 『誰?』と不思議に思っていると、上手く言葉が出て来ない。 知り合いだったら「どちら様」というのは失礼だし、でも記憶にないのにフリも出来ない。 「こんにちわ、食べっぷりが良かったお嬢さん」 恰好が違いすぎて気づかなかったが、桐谷さんと行ったパーティで会ったハーフ顔さんだ。 「あ、こんにちは」 「お友達は買ってくれてるみたいだけど、貴女はお気に召さなかった?」 「いえ、凄く可愛かったんです……」 見られていたとは思わず、それから口ごもってしまった。
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