第3話

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鈴はショッパーの中にあるアンケート用紙を手に取ると、これですよねと渡部さんに見せていた。 「良かったら奥にテーブルあるから今書いて貰ってもいい?お礼にいいプレゼントもありますよ」 「じゃあ、書いてみよう」 とワクワクしながら奥のテーブルに向かうと、私には『ちょっと待っててね』と目で合図された。 私は頷くと奥まではいかずにその場で待機していて、少しすると渡瀬さんだけが出てきた。 「メイちゃん?ところで、桐谷とはその後どうなの?」 少し近づき小声で聞かれたが、もう言ってもいいだろうと思ったので、付き合って旨を伝えた。 「桐谷がお付き合い……凄く興味湧いてくるね。話もしてみたいし、今日ご飯とかどう?」 「ちょっと無理です」 「ご飯食べて話するだけでも?」 執拗に聞いてくるので『彼氏がいるので』とハッキリ断ったつもりだった。 にも関わらず、フレンチとイタリアンどちらが好きとか話を膨らませようとするので今の私の言葉聞いてましたと思わず返していた。 「美味しいから前みたいに、沢山食べたくなるようなお店だよ?」 一応成人女性なのでその辺の理性は持っているつもりだ。 「ご飯が無理ならお茶は?前にパンケーキのお店あるって言ったでしょ」 「あの、ちょっと困ります」 なんで必死に誘うのか不思議に思うと同時に、桐谷さんの何が聞きたいのかと不安な気持ちにもなる。 苗字呼び捨てだし知り合いなのは分かるが、前のパーティで桐谷さんの態度を見た感じだと歓迎していないようにも見えた。 『鈴――っ、早く帰ってきて!』と心で一生懸命に訴えていた。 「心配しなくても桐谷から奪いたいとか思ってないよ?彼女も三人いるから」 ニヤッと口角が上がる顔を見ると、サーッとドン引きする自分がいた。
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