第1話

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「やっぱり佐々木さん、そういう事ちゃんと心得てていいですよね」 「どうかな……仕事って割り切ってるだけな気もする」 「そこは割り切りいいんですね」 何となく上手く一本取られた感じがするが、確かに仕事だと割り切れる部分が多く、お給料も貰ってるという意識がそうさせてくれる。 どうせ働くなら楽しく過ごしたいので、誤解を招く噂や悪口なども言わないようにするのが、女性の多い職場で働く最低限のマナーだと思っている。 ――恋愛はなかなか割り切れないけど。 ぼんやりと一人で考えていると「夜景でも見ません?」と手を引かれた。 気を抜いていたが私はすっぴんだし、外にも出れないのは勿論、他の応援の人に見られでもしたら大変だと冷静に判断し、きちんとお断りした。 「そっか……じゃあここからの景色で我慢します」と、静かにカーテンを開けていた。 夜景見ないかなんて、なんで急に言い出したのか分からないけど、ここは六階なので街の明かりが程よく望める高さだ。 眺めていると落ち着く気もするが、現実に戻って考えてみると明日は新店オープンの初日だし、そろそろお開きにしないと仕事にも支障が出てくる。 「そろそろ部屋で休んだ方がいいよ?明日は忙しくなるんだし」 「はい分かってますけど、名残惜しくて名残惜しくて……それに佐々木さん明日帰りますよね?」 「うん、でも、今日は秘密のお話出来て楽しかったです!」 と、我ながら感想とお礼も言えたので満足だし、お開きムードもしっかりと出せた気がしていた。
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