第3話

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箱の中身はピンクゴールドの限定セット三点とメッセージカードが添えてあり『連絡はこちらまで』と電話番号も書かれていた。 逆にあの場で開けておいて正解だったかもしれない。 プレゼントされる覚えもないし、自宅に帰ってからだと返す事すらできず、本当に連絡する羽目になっていた。 お店の前まで着くとハァハァと肩で息をしながら、入口の階段を上って行く。 『年寄りをこんなに走らせて……』 と思いつつさっきの場所を見たが渡部さんはいなかった。 鈴がアンケートを書く為に入った部屋に向かい、ドアの奥を覗くと渡部さんが座っているのが見つける事が出来た。 一人だったので開かれているドアをあえてノックした。 「おかえり!直接来たんだ」 「――これ、お返ししに来ました」 「まあ入って、今サンドウィッチ食べてたとこだから」 と言われただけで受け取ってもらえなかった。 仕方なく部屋に入ると椅子に座るよう合図され、机にショッパーを置いて返しますアピールをしておいた。 「美味しいからお一つどうぞ」 確かに美味しそうなホットサンドで、何個か買ってあるから食べても大丈夫と言われると何となく「いただきます」と手が伸びる。 食べる姿を観察しながら顎に手を乗せポツリと呟かれる。 「律儀に返しに来るなんて変わった女性だね……連絡しないにしても、受け取っておけば良かったのに」 「こんな高価な物プレゼントされても困ります」 「人気商品だからこそ、気に入ると思ってプレゼントしたんだよ」 とアイスコーヒーを置いてくれ、お礼を言って一口飲むとまたサンドウィッチを頬張り始めた。 「ねぇ、アイツのどこがいいの?顔、身長、職業?」 立て続けに質問してくるので、話そうとして咽そうになる。 「私には勿体ないくらい格好いいですけど可愛一面もあって。不器用な部分もあるし、似てるとこもあるような」 言い終わると、またホットサンドをパクリと口に入れた。
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