第4話

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――渡部さんだ。 「今晩は。一瞬違う人かと思って近づくまで自信がなかったけど、その髪型も素敵だねドキッとした」 「有難うございます、ちょっとイメチェンで」 苦手な人物と会ってしまい、思わず顔が強張るが無理して笑顔を作った。 「このジュース美味しかったよ」 手渡されたので受け取ると、ニンマリと笑みを浮かべている。 「白い肌に赤いけどキツくないリップがとても合ってる。メイちゃんって自分の見せ方よく知ってる感じだね」 自分の好きな服や物を身に着けているだけなので、他から見て不自然じゃないならそれは褒め言葉として受け取りたいが、何となくトゲを感じる。 「もう何か食べてみた?」 「はい、あそこの物は食べました」 即座に答えると、そこは変わらないねと笑って付け加えられた。 「あの、女性達の視線を感じるんでそろそろ他に向かいます」 気付けば近くの女性達がこちらを見ていて、確かにイケメンのハーフ顔に見惚れる気持ちも分からなくもないし退散する事にした。 「勝手にさせておけばいい、俺展示品扱い慣れてるから」 「私は……慣れてませんので」 とグラスを置いて先ほどの展示スペースに向かった。 まだ奥の方に見てない物があった筈で……何人かが遠巻きに見ていたのは大きなダイヤがカットされた物だ。 ラウンドブリリアンカットが施されている石は、綺麗は輝きを放って展示台の上で回転している。 勿論ガラスケースで覆われているが、色んな光が取り込まれた石は輝きが一味違って見えた。
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