第4話

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「さて、何か食べに戻りますか?」 ノブちゃんが誘ってくれるとまだデザートを食べてなかったと思い出し大きく頷いてしまった。 渡部さんはまだ席に座っていたが、ダイヤを見せてくれたお礼を言って部屋を立ち去った。 「今日は少し雰囲気も違っていてまた素敵ですな」 「あ、有難うございます」 ノブちゃんから褒めて貰うと何となく嬉しくて顔がニヤけてしまうのは、この世代の人だと嫌味がなく素直に言葉が入ってくるからかもしれない。 「見つかるとまた連れて帰ってしまうので、こそっと行きましょう」 人混みに上手く隠れながらスイーツコーナーに向かうと、お皿にそれぞれ盛りつけをして隅で食べる事にした。 「それにしても、メイちゃんは中々覗きのセンスがありますな」 「あはは……複雑な気分ですが有難うございます」 ほぼ同じタイミングでおかわりに席を立ち、遠慮なく楽しむことが出来た。 「では名残惜しいですが、この辺で見つからない内に消える事にします」 ノブちゃんとお別れをするとトイレに入り、化粧直しをしてから会場に戻る。 周りを見てもまだたっくんの姿は見えないので、外の景色でも見ようかと会場を出て、ホテルの通路から外が見える所を探した。 ソファーが置いてある場所に小さな窓があったので腰をかけ、スマホもチェックしてみたがメッセージはまだ入っていない。 ホテルの裏はベイエリアになっているので、外を散歩しても気持ちよさそうだし、遠くに見えるカフェも気になる。 少し時間を潰したがそろそろ会場に戻ろうと立ち上がると、視線を感じて前を向いた。 三人の男性が立ち話をしているが、一人がこちらを見ている気がする。 たっくんに似てるような気もするけど、ボンヤリとしか見えないのでここは素知らぬフリでやり過ごす事にした。 もし彼だったとしても、他のメンバーは仕事関係の人の可能性が高いのに手を振ってる場合でもないし、賢明な選択だったと言える。 会場に戻り隅の方で立っていると、渡部さんも男性と話をしているのが見えたので、何気なく視線を逸らし移動してみる。 「逃げなくてもいいのに……さっきは楽しい経験できたでしょ?」 後ろから声をかけてきた渡部さんと、もう一人の男性がいたのでお辞儀をしておいた。
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