第1話

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晩御飯はコンビニでも寄ろう……いや、最近はいつもコンビニになってるけど、何にするか頭に浮かべワクワクする気持ちは味わいたい。 出張も無事に終わった事だし、スイーツでも買おう……ご褒美を理由に罪悪感を減らすのは、女子がよく使う作戦だ。 『今度の休みは靴買いに行こうかな』 少し前までときめいていたくせに、すぐ身近なご褒美を思い浮かべるのはやはり現実にどっぷりと浸かっている年齢のせいだろうか。 きっと乙女ならドキドキして、暫くはご飯も喉を通らないな感じになるのかなと馬鹿な自問自答を繰り返し、バスに揺られて家路に着く。 まずはシャワー、そして部屋着に着替える。 いつものルーティンでようやくリラックスできる時間の始まりだ。 ボディクリームをつけ終わったところで、カフェラテで一服し幸せなひと時を過ごす。 最近はあまり吸わないので、タバコも止めようかなと頭を過っている。 久々にスマホに触ると何件かメッセージが入っていて、鈴にはただいまメールで返信をし、次に見たのは桐谷さんから。 『もう少しスマホ確認してください、返信がありませんが』 語尾に少し苛立ちを感じ取れるが、仕事が絡むと集中するので、特に無関心になってしまう。 とりあえず出張から戻った連絡を送ると『今ドコ』とすぐに返ってきて、自宅だと知らせておいた。 それからは何となく落ちつかずソワソワし始める。 外出にだとメイク必須になるし、かといってスッピンも見せたくないと考えていると、着信音が鳴りビクッと身体が震えた。 「もしもし……」 「放置されてた桐谷ですが、近くに来たけど何かいる物ある?」 「今晩は……あの、もうシャワー後でスッピンですし、御飯はコンビニで買って来たので大丈夫です」と答え、今日は会うの無理ですとやんわりと断ったつもりだった。 「俺もコンビニで買うから車で一緒に食べよ、あと十分ぐらいで着くからそのままの格好でいいよ」と切電された。
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