第1話

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「あの、そういう風に言われた事ないので驚いてますが嬉しいです」と囁くように答えるのが精一杯だ。 「いや、えと、俺も言った事ない」 お互いに顔を見合わせてプッと吹き出すと、緊張の糸が少し解れたような気がした。 「自分で恥ずかしいけど、言わないと後悔する気がしてるし、メイちゃんがどんどん離れていくようで。とりあえず想ってる事をぶつけてみた」 「そんな風に言われる素敵な女性じゃないので、照れあげてます……」 言葉を足していくにつれ照れてしまい、顔の温度がグンと上昇してくる。 シャワーを浴びたけど、何だか汗が出て来そうな程身体全体が火照っているようだ。 「――俺と付き合ってくれる?」 「はい……」 桐谷さんとのお付き合いが決まった夜。 佐藤さんには申し訳ない気持ちもあり、少し不安で複雑な思いも混ざっていたが、今は自分の気持ちに正直になろうと決心した。
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