第1話

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第1話

話をする内、お互い妙に打ち解けてしまい「ねぇ、疲れたからちょっと横にならない?」と神崎君はベッドに倒れた。 隣に並ぶと「手握っていい?」と聞かれ、何となくそのまま繋いでしまう。 手を握っていると何か安心してしまうのは、彼と別れてからこんな時間を過ごしてないからだろうか。 「あのさ、最近若い子に反応しなくなってるんだよね」 「えっ?」 驚いて思わず聞き返してしまったが、内容はまぁまぁヘビーだし深刻そうだ。 「自分で反応は悪くないと思うんだけど――若い子って期待してくるでしょ?それも嫌で、考えると使い物にならなくなる」 「あ、それ何か分かるかも『身体だけ?』って思うと不信感が出てくるというか……」 男性から聞いたのは初めてだけど、似た内容で悩んだ事がある。 いつも求められると冷めるというか、一緒に過ごしたいだけなのにと思ったものだ。 「佐々木さんには触れたくなるし、手を握って貰えて嬉しくて因みに反応もしてる。だけど『壊したいけど大切にしたい』複雑な心境で、嫌がられたら手は出せないかな」 サラリと言われたがドキッとしてしまい、動揺を隠すように顔を少しだけ背けた。 『大切に思うから手を出さない』というのは凄く嬉しい言葉だ。 桐谷さんや佐藤さんとはまた違う考え方だけど、大切にして貰えてるって実感出来る言葉や仕草はとても嬉しい。 「私もいい歳になったけど、そういうの割り切れないというか、ドライになれないというか……器用に振舞えないんだよね」 「何かどんどん自分に幻滅してます」と、ため息交じりだ。 「もし嫌なら断ってみてもいいんじゃない?無理なら別れてもらうとか、でも本当に神崎君の事を好きなら分かってくれると思うよ?」 「なかなか男性からは言い出しにくいですよ、男のプライドとかあるし」 片腕で顔を隠すようにしているが、神崎君の顔が赤くなってると想像がついた。 「そういうのも含めていいなって思える人が出来ると、きっと楽しくなって、そんな事気にしなくなるんだろうな」 男性としてプライドもあるけど、ガツガツしてる女子が苦手な草食系の神崎君も悩みが沢山あるようで。 アパレル本社で女子に囲まれ仕事をしてるので、気疲れも含め大変なんだと思えた。
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