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同僚らしき黄土色の奴が二人組で寄ってくる。悠子は表情を変えないが、夕凪が眉をひそめた。
「貴様等何をしている」
今度は日本人ではなく、黒人が英語で割り込んできた。これまた見たことがない記章だった。上級曹長のより棒が一本多い、そして黒い軍服だ。
「先任上級曹長です。初めて見ました」
「いえね、女子高生と茶でもと思って、なあ?」
「ああ、そう怖い目をしなさんなって」
英語を喋るようで楽しそうに言い訳をする。別になんとも思っていないようだ。
「君達、英語は?」
「私が解るわ」
夕凪しか喋られないので一歩進み出る。
「私はクァトロのフィル先任上級曹長だ。確認するが、もしかして少尉候補生?」
「そうよ」
「失礼しました、候補生殿! 御用があれば何なりと」
黄土色が侮蔑するかのような視線を送る。ロビーの空気が緊張した。
報告を受けた黒服の将校が一人エレベーターでロビーに降りてくる。
屯していた一堂が起立して敬礼で迎える。三十代の後半だろうか、意思の強そうな瞳が印象的だ。
「どうしたフィル先任上級曹長」
フランス語で詰問した。
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