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ゆっくりと簡単な単語を選んで喋る、式典の最中に捕らえられたと。
「義兄上は俺に言った、早まった真似をするなと。だからユーコ中尉、君も動いてはいけない」
「……それがあの人の意志なのですね」
「そうだ」
「承知致しました。私はそれを受け入れます」
悠子は敬礼してその場を後にする。今まで怒りで騒いでいた将校らが彼女の態度を見て何とか気持ちを鎮める、ハラウィ准将も小さく頷いて座った。
「悠子、いいのかしら?」
「何がだ」
「だから、捕らえられたって」
歩きながら夕凪がそんなのおかしいじゃない、声を上げる。いつも冷淡な彼女であっても感情をぶつけることはある。百合香も困った顔をしていた。足を止めて悠子が振り返る。
「今は! それを受け入れるしか無い。私は約束をした、それを果たさねばならん」
――騒ごうと何をしようと、あの人がそう決めたなら信じて待つしか無かろう。
「私とて……私とて悔しいのだ!」
「悠子……ごめんなさい」
「良い、ホテルに戻るぞ。候補生団の面倒は私が見なければならんでな」
軍が無くなろうとエスコーラは存在する。主任として最後まで役目を全うする悠子であった。
――レジオネール戦記・IF・国防軍少尉候補生 完結――
統合続編、次作
レジオネール戦記・IF・継承者
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