5人が本棚に入れています
本棚に追加
OOつき物件
会社の飲み会終了後。うっかり終電を逃してしまい、少し値は張るがタクシーを拾うべきか、あるいはネカフェに転がり込むべきか。その二択で迷っていたところへ救いの声がかけられた。
「ウチ、近くだから。泊まってくか?」
一も二もなく頷いて先輩の部屋に転がり込んだ。
正直、今月は懐具合が淋しい。だからタクシー代もネカフェの利用料も要らない状態はありがたい。
そう思っていたけど、部屋に通されるとすぐに不満が込み上げた。
上階がやたらとうるさい。もう日付も変わってるっていうのに、子供の走り回る音がムカつくレベルで響いてる。
「上の奴、非常識っスね。こんな時間にガキはしゃがせて。あー、文句言いに行きてー」
酒で気が大きくなってたせいか、俺は荒々しくそう吐き捨てた。けれど先輩は穏やかに笑って、
「それは無理だ」
と一言告げた。
「何でですか! こうまで騒いでるんスよ?! 文句くらい、言っても悪くない…いいや、むしろ言って当然でしょう」
「俺もそう思うけど無理なんだ。…ウチ、最上階だからな」
翌朝、ベランダからオレを見送ったくれた先輩の部屋は、確かに三階建ての最上階にあった。
後々聞いた話じゃ、先輩の借りてる部屋、家賃がやたらと安いらしい。
本人はのほほんと、
「バス・トイレつき、一部家具つき、さらにいわくつきの格安物件」
なんて言ってるけど、俺はあの日以来ずっと、先輩に、早く引っ越した方がいいと勧めている。
OOつき物件…完
最初のコメントを投稿しよう!