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「__もしも、憎い人の生死が自由にできるならば、どうしますか?」
電車に乗っているとおじさんがそう言った。いつのまにかあたりには誰もいない。降りる駅を乗り過ごしてしまったのだろうか。怪しい人だな、私はそう訝しげに思いながら閉口したままだった。
だが、その『もしも』が叶うならば__私は殺したい人間がいる。
「そうですか」
かたん、ことん。電車は進んでいく。
目の前のおじさんは私の心情を見透かしたかのようなタイミングで、そう返事をしたのだった。ぎょっとしながらも暇つぶしにでも話に乗ってみるか、とおじさんの返事に頷いた。
「ええ」
俯くと、長い黒髪で視界が覆いつくされる。精一杯の力を込めて、握り拳を作る。
彼奴らが憎い。
私は、いじめられていた。その主犯格のグループが憎いのだ。みなさんご存知のスクールカーストと言う奴で、私をいじめるグループは頂点、私は最下層と言うどうしようもない、どうすることもできない立ち位置だった。
「あいつらのせいで私の高校生活がめちゃくちゃだもの」
私は呆れかえって、顔を上げるとおじさんに言った。
仮にクラス替えをしたとしよう。だが、私がいじめられていたということは、もう広まっている。また新たなクラスでのいじめのターゲットにされるだけだ。そんなんならば、いっそのこと死んでやろうかと思ったことがある。だが死ぬ勇気がない。当然、次に出てくるのが、高校中退と言う考えだが三年間と言う一時の時間のせいで人生を棒に振る勇気もない。
どうしようもできない、無性にもどかしい日々が続いていた。
「そうですか。ならば__」
おじさんは丸く薄いネックレスを私に渡した。苦笑しながらも私はそれを受け取ってしまう。いったい、私はいくらの膨大な金を払うというのだろう。そう思っていたのである。この際、人生も全て投げ出してしまおうか。
心の中で先ほどとは正反対の支離滅裂な考えをしながら、私はおじさんの次の言葉を待った。だが、その言葉の続きは意外なものだった。
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