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異変が起きたのは翌日だった。ドアに手をかけると教室の空気が違った。いつも女子の甲高い声でいっぱいの教室は、今日は静まり返っている。
ドアを開けると教室中の視線が私に降り注いだ。何があったのだろうと訝しげに思いつつ私は自分の席に座り、自分の周りの声に耳を澄ませた。
「月島さん、死んだんでしょ?」
「交通事故だってね」
「可哀想に」
__月島が、死んだ?
鳥肌が体中を駆け巡る。どういうこと? まさか、あれが本当だったというのだろうか? だとしたら、私は一時の感情でなんてことをしたのだろうか。確かに憎いし最悪、死ねばいいと思った。間接的にせよ、私は彼女を殺したのだ。私の胸中での罪悪感は計り知れないものだった。
まだ夏だというのに、寒い。それは私しか感じられないことだった。
その日は、始業式だったため午前中で帰れた。私のクラスは突然のクラスメイトの死に騒然としていて、とてもじゃないがホームルームをやる雰囲気ではなかった。
帰り道。私は自分の行ったことを必死に正当化していた。あいつらが悪い。私をいじめたのが悪い。これは制裁だ。大丈夫、大丈夫。
そうでもしなくては、私は罪悪感で胸が押しつぶされそうだったのだ。
だが、何かの拍子で正当化したことが罪悪感と逆転した。人の生死を握っているということと私が悪を裁いている優越感が、罪悪感を帳消しにしたのだ。
そこから先、私が狂うのは簡単だった。均衡を保っていた理性と感情が、崩れ始めていたのである。
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