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いよいよ、最後の一人だった。
どうやら、このネックレスは月の満ちを表していたようで、最後の一人で満月になるところだった。
「ふふ、ふふふ」
私は不気味に笑いながら、あいつの名前を口にする。私が最も憎んでいて、嫌いな人で思い出したくもない人の名前を口にする。それを、いとも簡単に名前を言い終えると、私は再び笑い始めた。
それと同時に、この優越感に浸れる日々が終えるとなるとつまらない気がする。例えるならば文化祭と後夜祭の興奮が冷めきるような、少し寂しくなる気分である。
……『いつも通り』に儀式を終えたはずだった。
__ギッ、ギッ。
誰かが階段を上がってくる。母だろうか? いや母は今、買出しに行っているから違うだろうし、父は仕事で会社に向かっているのだ。では、誰? __不審者? すぐに答えが出た私は、大慌てでどこかに隠れようとした。クローゼット? ベッドの下? 私はクローゼットに身を隠すと、息を整えた。
__ギッ、ギッ、ギッ。
定期的に『誰か』を来たことを知らせる音が、こんなにも怖いと思ったことはない。強盗だろうか? だとしたら警察に連絡したいところだが生憎、携帯はベッドの上だ。私は自分の愚かさを呪いながら、身を縮めなるべく息をせぬようにした。
__ガチャッ、バタン……。
どこかの部屋を、開けている? でもすぐにドアを閉めた。二階にはトイレはないから、強盗目的ならば全部屋を確かめるだろう。では、どうして……?
__ガチャガチャッ!!
鍵が閉まっている部屋は父の書斎だ。そして、私のすぐ右隣にある部屋。確実に近づいてきている。そのことに気付いた瞬間、私は体の震えが止まらなくなった。当然だ。何者かも分からない『誰か』が近づいてきているのだ。
母なのか? 母だとしたら私はなんて馬鹿なことをしているのだろう。だが、昼食の買い出しには母はいつも一時間ほどかかるのだ。まだ、そんなに時間は経過していない。じゃあ、誰なの……!? 誰だっていうのよ!
不意に響いてきた音が私の焦りを加速させる。
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