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宇堂保はちょっとした空腹感を覚えて、空を見上げた。
都会の夜空は、晴れていても星なんか見えない。
その代わり人工的な灯りが厚い雲に反射し、濃いラピスラズリの色を浮かべている。
クラブの水槽と同じ、着色された水の色。
自然でない水の中ではすぐに窒息してしまうに決まっているのに、色とりどりに着飾った熱帯魚たちは、保の目の前をひらひらと泳いでいく。
都会の人々は刹那の時の美しさを競って、この人工の灯りの中を蠢いている。
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