35人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あぁ腹減った」
感傷的に景色を眺めるのもいい加減にして、そろそろ今夜の相手を探さなければならない。
でないと保は、窒息の前に飢え死だ。
携帯を片手に、保はつらつらと食事を奢ってくれそうな相手を頭に浮かべる。
フランス料理ならアケミ、チエはイタリアンが好きだ。
和食でいい店を知っていそうなのは秋山で、寿司なら高木。
中華もいいな。
あのねっとりとした豆の辛さがクセになる、四川料理と李水連の顔を思い浮かべた。
細い目に丸い体、イモムシのような太い指をした男。
このあたりの四川料理チェーン店の総支配人だが、料理よりも短い指を駆使して保の体を愛撫することを好む。
「うーえぇ……、胸焼けしそうだ」
どんな高級料理も思いのままだが、そのあとの代償は保の身体。
食事の後にはベッドを共にする。
宇堂保は高級男娼だ。
この19年間のほとんど年月を、そうやって生きてきた。
最初のコメントを投稿しよう!