魔法の電子レンジ

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就職を機に四国のど田舎から東京に上京してきた。 築40年以上は経っているであろうボロアパートのワンルームが私のこれからの生活の拠点になる。 「よし」 気合を入れて大家が住む部屋のインターフォンを押す。 出てきたのは30代前半の目鼻立ちがはっきりとした細身の男性。ボロアパートの大家とは思えないさわやかな好青年だ。 「あの、今日からお世話になります」 「こちらこそよろしくお願いします。では部屋に案内します」 挨拶もそこそこに部屋まで案内してもらう。 私の部屋は鉄筋で出来た階段を上った一番奥の部屋。 鍵を開けてもらうと、少し古臭いカビのようなにおいがした。 一歩部屋に足を踏み入れると、すぐ真横にキッチンがある。 そこには冷蔵庫や炊飯器、電子レンジが置いてあった。 「では事前にお話しした通り、家電製品は自由に使っていいから」 大家はそう言い、鍵を渡して部屋を出ていった。 私がこの部屋に決めたのは家賃の安さに加え、家電製品が備え付けられていたからだ。この家電はどうやら前の住民が置いていったものらしい。 「立派な電子レンジ」 思わずそう呟いてしまうほど、その電子レンジは真新しく実家で見たものよりもすこし大きく感じた。 中を覗き込むと1枚の紙が入っているのに気づく。 取り出してみるとどうやらそれは説明書だった。
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