11人が本棚に入れています
本棚に追加
「牧瀬様、いつもありがとうございます。またのご来店を心よりお待ちしております。」
老舗のデパートの化粧品売り場で店員達は次々と私に頭を下げる。
地位も、名誉も、お金も。
人間が欲しがるもののほとんどは手に入れてきたはずだけど・・・。
一つだけ、自分の中でまだまだ満足出来ていないものがある。
そう、それは女性としての美しさだ。
がむしゃらに働いて、やっとこの位置まで辿り着いたのに。
ふと気付いて鏡を見たときに自分の姿に愕然とした。
そこに映ったのはただのおばさんだったからだ。
深く刻みこまれたシワ、知らない間に浮き出てきたシミ。
時が経って、やっと自分の為だけに時間とお金が使えるようになった。
だからこそ今、少しでもいいから戻りたいと思う。
若かった頃の自分へ。
最初のコメントを投稿しよう!