若返りファンデーション

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「牧瀬様、いつもありがとうございます。またのご来店を心よりお待ちしております。」 老舗のデパートの化粧品売り場で店員達は次々と私に頭を下げる。 地位も、名誉も、お金も。 人間が欲しがるもののほとんどは手に入れてきたはずだけど・・・。 一つだけ、自分の中でまだまだ満足出来ていないものがある。 そう、それは女性としての美しさだ。 がむしゃらに働いて、やっとこの位置まで辿り着いたのに。 ふと気付いて鏡を見たときに自分の姿に愕然とした。 そこに映ったのはただのおばさんだったからだ。 深く刻みこまれたシワ、知らない間に浮き出てきたシミ。 時が経って、やっと自分の為だけに時間とお金が使えるようになった。 だからこそ今、少しでもいいから戻りたいと思う。 若かった頃の自分へ。
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