七章

8/32
364人が本棚に入れています
本棚に追加
/886ページ
それからは水城奏を先輩と呼んで、懐くようになった。 ぶっちゃけ、男の先輩に懐くなんて最初のうちは気恥ずかしかったけど、マジで世話を焼いてくれるもんだからもうどーでも良くなった。 一回聞いた事がある。先輩が俺にどうしてそんなに世話焼いてくれんのか。 珍しく言葉を濁した先輩は、明後日を向いて呟きを漏らした。お前を見てると弟を思い出すんだよね。それっきりだ。先輩が俺に過去を明かしたのは。 深く追求しようとすると笑顔で緩くかわす先輩に、もうそういった質問をするのは止す事にしたんだ。だってさ、誰だって暴かれたくない過去の一つや二つあるだろ? 本当はどうして先輩が周りに女をはべらせるのかも不思議だった。別に先輩はチャラ男な訳じゃない。俺から見ても真面目だと思うんだ。うん、むしろ硬派。 なのに、なんで女を引き連れてるのかー……やっぱ根が優しいからか?俺の元カノは史上最悪なヤツだったから、先輩もああいう態度に出たけど、基本優しいからなぁ。 素直に好意を寄せられたら、無下には出来ないタイプに違いない。お人好しな面もあるしさ。 『なぁ、聡。お前、また女の子に告白されてたって?』 目を三日月にしてニヤニヤ笑う水城先輩は、俺に結構素を出してるのかも。普段は才色兼備、品行方正を決して崩さないと先輩が、俺にはざっくばらんな顔を晒してくる。 『誰から聞いたんっすか!』 『一緒に講義受けてるヤツ。聡は四年の間でも有名だからなぁー』 何と言ってもオーラが違う。ただ歩くだけで目立つから。天性のものなんだろうなぁ、芸能界向きだよ。聡は。こっぱずかしい事を平気で放つ先輩に、俺はそっくりそのまま返しますよって気分だった。 先輩の方がきらびやかなオーラ出しまくりですから!じろり、恨みがましい目をぶつけても華やかな笑顔を返される。ん、どうした?としれっとした目線を送られたら、こっちが折れるしかないんだ。 『で、付き合わないの?聡には純真で可愛らしい子が似合うと思うよ』 元カノみたいな女に引っかかるなよ…と言わずとも、目でさりげなく諭してくる先輩はやっぱり優しい男だ。
/886ページ

最初のコメントを投稿しよう!