1 博物館

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「引き合ったのかしら。それも一興」 ひとり納得しているが、やはり高広にはわからない。 「あんたねー、何言ってっか、さっぱりわかんねーんだけど――」 高広は握りなおした懐中電灯を手の中で ――クルリ―― と回す。 それまで正面を向いていた光の輪が、一気に高広の方を向いて、LEDを警備服の腹に埋めてしまえば、辺りはほぼ暗闇の中に沈む。 『早いモン勝ち!』 心の中で呟いて、高広はすばやく台座へ手を伸ばした。 自分の方が、女より猫に近い。 『銀の猫』をこの手に捕まえた、と思った。 捕まえるはずだった。 しかし、 ――何もない―― スカッと音のしそうな勢いで高広の右手は空を切り、さっきまで確かにそこにあったはずの猫の彫像が、忽然と消えていた。 代わりに、 「忘れないで。彼女の名前はハディーヤよ」 闇の中で女の声がした。 ひとり残された高広は、我に返って慌てて人を呼ぶ。 博物館はすぐに大騒ぎになった。
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