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2 闖入者
高広はラッキーストライクのフィルターを、噛みちぎりそうな顔で咥えている。
未成年に喫煙は許されていないが、誰もいない自宅では、そうせずにはいられないほどむかっ腹がたっていた。
結局、女泥棒も『銀の猫』も行方不明のままだ。
詳細を教えられることもなく、ただ犯人扱いされて、屈辱を味わっただけでお払い箱にされた。
不公平だと高広は思う。
人は不平等だ。
――ピンポーン――
無機質なインターフォンの音に、高広は苛立ちを隠しきれない不機嫌な声で、
「はい」
と答える。
そこには、
「ハーイ」
語尾にハートマークでもつきそうな明るい声で、モニターにむかいひらひらと手を振る、例の女泥棒が立っていた。
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