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「それで? 俺に何の用?」
高広は不機嫌丸出しの声で問いかけながらも、それでも急須に入れたお茶を、人数分の湯飲みに注いでやる。
我ながらお人よしだと呆れてしまう。
尋ねてきたのが女泥棒だけだったなら、高広も冷たく無視しただろうが、
その後ろに、意味ありげな美少女をひとり連れていたのだ。
……つい家に入れてしまった。
少女は、色白の肌に銀糸のようなふわふわした髪。
緑の瞳。
とにかく絵に描いたような、という形容詞がこれ以上ないほど相応しい少女で、
ちょっと作り物みたいな美しさだった。
女泥棒は熱い茶に眉をしかめながら一口すすって、
「ね、高広くん。この子、二三日預かってくれない?」
高広は思わず、急須ごとひっくり返しそうになる。
教えた覚えのない名前を呼ばれたのにも驚いたのだが、
それよりなにより、女泥棒の提案に驚いたのだ。
……いや、動揺した。
高広はコホンと咳払いして、タバコの箱を開け、唇で一本くわえ出す。
「俺は、聖人君子じゃねーぜ」
チラリと少女を盗み見れば、銀糸のふわふわした髪に緑の目。
そしてしっかりと『女』の体。
見た感じは14、5歳だろうか。
17歳の高広と、あまり歳の差を感じるほどでもない。
「スケベ呼ばわりした、ヤリテー盛りの男の家に、この子羊ちゃんを一匹で残してくつもり?」
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