1 博物館

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秋場高広は、実際は高校2年生の実年齢だった。 だが、祖父のいるスウェーデンで、スキップ制度を利用して、大学の入学資格を取った。 そのまま順調にいけば、マサチューセッツ工科大学でも狙える頭脳を持っているのだが、 なんとなく今は、両親が暮らす日本にいる。 その選択を、『銀の猫』を前にして、しみじみと喜んでいる。 「キミに出会えたのは運命かな」 触れると温かいのではないかと思えるほど、なまめかしく光り輝く未知の鉱物。 こんな物体に巡り合え、こうやって側にいられる幸福に、高広は身震いした。 見るだけでは治まらず、高広はついに『銀の猫』に手を伸ばし、触れる。 高広の手のひらに届いた感触は、やはり鉱物の冷たく硬いものだったが、 その事実にちょっとだけ肩を落し、それでも光沢の謎を解こうと、続けて指を滑らしていく。
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