1 博物館

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「女の扱いに、慣れているのね」 『銀の猫』が、しゃべったのかと思った。 もちろんそんなわけはなく、振り返れば、 「セクシーな指だわ」 女がひとり立っている。 体のラインを際立たせる黒いライダースーツ。 背中にはディバック。 非常灯の灯りしかない暗い収蔵庫の中。 湧き出たように、そこに姿を現した。 「――あんた、誰だ?」 高広は警備員の使命を一気に思い出す。 この状況で、気配もなく灯りもなく、こんな場所まで忍びこんでくる者と言えば、 「泥棒よ」 女はそう自己紹介して、 「ふふっ」 色っぽく笑う。
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