2 闖入者

1/7
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ

2 闖入者

高広はラッキーストライクのフィルターを、噛みちぎりそうな顔で咥えている。 未成年に喫煙は許されていないが、誰もいない自宅では、そうせずにはいられないほどむかっ腹がたっていた。 結局、女泥棒も『銀の猫』も行方不明のままだ。 詳細を教えられることもなく、ただ犯人扱いされて、屈辱を味わっただけでお払い箱にされた。 不公平だと高広は思う。 人は不平等だ。 ――ピンポーン―― 無機質なインターフォンの音に、高広は苛立ちを隠しきれない不機嫌な声で、 「はい」 と答える。 そこには、 「ハーイ」 語尾にハートマークでもつきそうな明るい声で、モニターにむかいひらひらと手を振る、例の女泥棒が立っていた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!