第1章

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 運命なんてものを最初から信じて無かった。むしろ、運命なんて無いと思ってた。だから、今こうして目の前の女の子に別れ話を告げられているのは別に当然なことであって、特別な感情は産まれない。元々好きじゃないのに付き合った僕に非があるのは誰かに言われなくてもわかっている。それでも、彼女のことをきっと好きになる、と心のどこかで思って付き合った。  それでもやっぱり彼女のことは好きになれなかった。合わなかった。何もかもが。でも、それを運命の相手じゃなかったから、とかそんな風に言い訳するほど、僕も子供ではなくて、仕方がないと思っている。  運命とか、そんなものは結局この世の中にはなくて、神様も居ない。あるのは、下心ありまくりで女子に接近する男子と、それに応える女子。あとは純粋な気持ちで恋愛する男子にそれの気持ちを弄ぶ女子、ぐらいだ。  恋愛なんて、結局は陳腐なもので、それをしなければ生きていけない訳ではない。でも、結局はそんなことを思ってみても、他の人の相思相愛な様子を観ては恋愛に憧れてしまう。そして、付き合ってみたら、自分の求めて居たものは違って、結局恋愛に失望する。  そんなループなだけな気がする。結局、今回の失恋で得たものは恋愛に対する失望だけであった。失恋というか、テストというか。  まあ、そんなことは置いといて、今は目の前の女の子との会話に集中しないといけないんだけどね。彼女は僕のことが好きだった。そんなことは、彼女に特別な感情を抱いてなくても、一緒に居たら嫌でも分かった。だから、彼女の中から僕の存在を消してあげないといけない。それが、好きじゃないのに付き合った、僕に出来る最大の償い。どうやって、彼女の中から僕の存在をなくすのか迷った結果、僕は彼女に……いや、元彼女に最悪な一言を言った。 「僕さ、実は君と付きあってたのは遊びで他に好きな人いたんだ」  刹那、僕の頬に鋭い衝撃が走った。ヒリヒリする感覚から、彼女が僕にビンタをしたことが分かった。分かっていたけど、ビンタされてようやく、僕が彼女に最悪なことをしたんだって再認識できた。
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