クラブ・キャッスル

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「猛暑日にジョギングでもしてきたのか? 物好きなヤツだな」  タクマさんが呆れ顔を見せたのは、僕の後に駆け込んできたカズに対してだ。息を切らして、整った顔に汗の玉を浮かべている。 「シュウさん、どうしてそんなに涼しげなの? 汗ひとつかいてないじゃないっすかぁ」  カズが恨みがましく僕を睨む。 「走っている時に、汗腺を閉じたからね」エレベーターが到着したので、僕は乗り込んでから説明を続ける。「心と身体は結びついているんだ。少し練習すれば、汗ぐらい簡単にコントロールできるよ。カズもやってみるといい」 「そんな器用な真似はできませんよ。ねぇ、タクマさん」 「俺はできるぜ。ベッドで一戦を交えている時、汗まみれは美しくないだろう」 「そんなことないっす。“あらぁ、カズったら私のために、そこまで頑張ってくれているのねぇ”ってなもんですよ」 「ふん、美的センスの差だな」 「あ、タクマさん、今、俺のことをバカにしたでしょ」  わいわい騒いでいるうちに、エレベーターは最上階に到着する。 『キャッスル』が占めるフロアは、一種独特な雰囲気に包まれている。内装や家具,装飾品,カーペットのすべてが、アールデコ調のデザインで統一されているせいだ。ヨーロッパの古城に迷い込んだような錯覚を覚える。
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