女性を抱く仕事

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 暗闇に慣れた眼で果実を確認する。美しくて豊かな水蜜桃(すいみつとう)だ。若い男性なら誰でもむしゃぶりつきたくなるだろう。  僕はプロなので、もちろん、がっついたりしない。果実に手を伸ばすのは後回しだ。二の腕に指先をはわせながら、もう一度キスをする。今度はじっくり時間をかける。それだけで、裕美子さんの呼吸は荒くなった。  いくつかの反応から、わかったことがある。裕美子さんにとっては、久し振りのセックスらしい。一年以上、もしかしたら、数年振りかもしれない。  僕は裕美子さんのことをほとんど何も知らない。何せ、さっき会ったばかりなのだ。  セックスレスに悩む奥さんかもしれないし、ずっと男を遠ざけてきたキャリウーマンなのかもしれない。既婚者か独身か、職業、立場、恋人の有無など、裕美子さんの人となりを構成するものは、今は関係ない。  僕はただ愛情を込めて、裕美子さんを抱くだけだ。 「セックスには人となりが現れる」この業界に僕を引き入れた、レイカさんの言葉だ。その通りだと思う。  僕のセックスは一言でいうと、「恋人を(いつく)しむように心を込めて抱く」。お客様のリクエストに応じて、いくつかのバージョンを使い分けるけど、レイプまがいの荒々しいセックスは苦手だ。  裕美子さんのしなやかな腕をさすり、伸びやかな脚をなであげる。指先が太股の内側に触れた時、息を飲む気配が伝わってきた。
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