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この仕事はお客様のペースに合わせる技量が求められる。時には強引さと意外性を期待させることもあるけれど、裕美子さんにはあてはまらない。御無沙汰であったことも含めて、前戯に時間をかけることが必要だ。
髪の毛をなでながら、額にキスをする。二の腕に指先を這わせて、肌のなめらかさを確認する。指先を肘まで滑らせてから、腰に移らせる。腰骨を過ぎてヒップに達する手前でUターンさせる。
本当にスベスベとした肌だ。裕美子さんは甘い声をもらしながら、可愛らしく身を捩じらせる。とてもなめらかで、スベスベしている。僕の指先と裕美子さんの肌は最高の相性である。指先を太股の外側に滑らせると、裕美子さんは感極まって僕にしがみついてきた。
「どうして、こんなにいいの……」
予期せぬ快感に戸惑っている。
「脚に触れられて感じることは、珍しいことじゃないですよ。僕のお客様の中には、脚だけでエクスタシーに達する方もいます」
嘘でも誇張でもない。性感帯は胸と股間だけではなく、身体中に分散している。ほとんどの男性は、すぐに胸と股間に手を伸ばす。それがセックスのセオリーと思ったら、大きな間違いだと思う。
個人の趣味嗜好は千差万別だし、セックスもまた同様である。脚が感じるなんて、ごく普通のことなのだ。
「裕美子さんの脚、とてもきれいです」
僕は耳元で囁きながら、太股の外側に指先をゆっくり這わせる。裕美子さんは、もう逃げない。僕に身体を委ねてくれている。
セックスに躊躇いや罪悪感を抱いている方の場合、胸と股間以外を愛撫することは効果的である。大事に扱われていることを実感してもらえるからだ。男性と違って、女性は肉体と精神の結びつきが強固にできている。大事に扱われている感覚がないと、セックスに没頭することができない。
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