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クラブ・キャッスル
通勤ラッシュの終わりかけた時間帯に、東京メトロ日比谷線に乗り込んだ。
月曜日の乗客たちは一様に、憂鬱そうな表情を浮かべている。猛暑が続いているせいだろう。
銀色の車両は冷蔵庫のようだった。昔から冷房が苦手なので、隣の弱冷車に移ることにする。
耳に飛び込んできたのは、子供たちの喧騒だ。夏休みに入ったので、家族でどこかに遊びに行くのだろう。母親の注意にもおかまいなく、楽しそうにはしゃいでいる。
迷惑をこうむっているのは、貴重な仮眠時間を失った近くの乗客たちだ。僕も移動中、文庫本を読むことを習慣にしている。元気な子供たちは嫌いではないが、喧騒から逃れて、さらに隣の車両に移動することにした。
電車の中で読むのは、好きな作家の短編集が最適だ。短編を一つか二つ読み終えると、目的地に着いている。
僕が降りたのは、六本木駅だった。改札を抜け、人の流れにのって階段を上る。地上に出るや、湿気を含んだ熱気に包まれた。東京タワーに向かって歩き出すと、たちまち汗が噴きだした。コットンシャツとデニムのパンツが汗を吸っていく。
六本木には僕の所属する事務所があり、毎週月曜日に顔を出すことを習慣にしている。自由業はただでさえ曜日感覚を失いがちだ。通勤の真似事をしたりするのも、普通の感覚をキープしておくためである。
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