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「シュウにぃから?ありません。電話もメールも…」
「そうか。変だな……」
だから、そんなにシュウにぃを気にする必要はないと思うんだけどな。
だけど、それを言ってしまうと、いましっかりと繋がれているこの手を離すことになりそうな気がして……。
何も言えなかった。
シュウにぃが帰って来なければ、イチにぃが『お前ら付き合ったらどうだ?』なんて言わなければ、主任は私と付き合ったりしなかったんだろうか。
いつもは心地よくさえ感じるこの沈黙が、今日はちょっと苦しい。
マンションの前、いつもの別れる場所。
「主任、今日も送っていただきありがとうございました…」
まだ離される気配がない私の右手。
自分から離したくはなくて、悪あがきと分かってはいるけれど、繋いだままの指に少しだけ力を入れてみた。
「…………名残惜しい?」
主任の悪戯っぽい視線を受けて、急に恥ずかしくなった私は、手を離そうとした。
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