第1章

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 照らし出されたのは美しい両足だった。その足がまばゆく輝く黄金色のピンヒールを履いているのだ。十五センチはありそうなヒールを含め、まるで作りもののような美しい足だった。  足の主がさらに一歩進み出る。光の中にその姿が徐々に現れる。足に続く長いふくらはぎ、細いもも──そしてとうとうその全容が照らし出された時、尚吾はあっけに取られて声も出せなかった。  現れたのは足や靴に負けず劣らず美しい容貌の人物だった。ショートカットの黒髪が色素の薄い眸の色を引き立てている。それでいて白い顔の中にある唇は、露に濡れた花弁のように仄紅い。真っ白なカットシャツに黒いレザーのショートパンツ。そんなシンプルな格好が、極上の礼装に見えてくる。  これが琅。 【小指姫】の店主の男──  琅がにこりと笑う。女たちがいっせいに息を呑んだことが分かる。 「ようこそ。【小指姫】へ」
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