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おばけの出る道
学校からの帰り道。その日はたまたま友達の家に立ち寄って、いつもとは違う道を通ることになった。
その途中で一人の女の子と出会った。
赤いランドセルを背負った女の子。まだ低学年くらいかな。小っちゃくて、駆け寄って来たその子が隣に立つと、黄色い帽子のてっぺんだけが見えた。
「お兄ちゃん。そっち、通るの?」
女の子が指差したのは、今から俺が進もうとしていた道だった。
車は、一台ならギリギリ通れそうなくらいの幅で、一応下もアスファルト舗装。だけど両脇の民家の壁がやたらと高く、威圧感がある。しかもどっちの家からも、塀の上から庭木の枝が張り出していて、そのせいで道はやたらと薄暗い。
「通るけど、この道がどうかしたの?」
「あのね、ここね…、おばけが出る道なの」
そう一言口にして、女の子は細い肩をぎゅっと竦めた。
おばけねぇ…。
確かにそういう雰囲気はある。ただでさえ茂った木で薄暗いのに、日が暮れかけているせいで、道はさらに鬱蒼とした様子になっている。
この辺りに来たことがないから知らなかったけれど、おばけが出るって噂があってもおかしくはない印象だ。
小学生の、しかもこんな小っちゃい女の子じゃ、怖がるのも無理ないな。
「お兄ちゃんが通るなら、ついてってもいい?」
「いいよ」
頷くと、女の子は俺の制服の袖をきゅっと握った。
俺には弟がいるけれど、年子だし、昔から生意気でこういうふうに頼られたことはない。だから、怖がる女の子がなんだか可愛くて、悪い気はしなかった。
「じゃ、行こうか」
優しくそう言うと黄色い帽子がこくんと頷く。それを見届けて俺は薄暗い道に踏み込んだ。
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