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わたしは歌うことが好きだ。
しかし、わたしは音痴でリズム感もないときてる。
悲しい奴である。
とある駄菓子屋で、カナリア飴なるものを見つけた時は、深く考えず買った。
買った時、店主のおばさんがニコニコしながら
「カナリアは一日一個にしないと駄目よ」
その時は甘いモノは食べ過ぎるなということだと、単純に思った。
黄色に砂糖をまぶしたカナリア飴を頬張る。
意外と美味しい味に満足して、何時ものように歌いながら帰ろうかとした途端、なにかうまく言えないが何時もと違うことに気づいた。
「はい?」
声が違うのだ。
ハイトーンボイスでまるで鳥のよう。
「なにこれ!」
試しに有名で難曲な歌手の歌をうたってみる。
高音も楽々と出て、まるで自分の声じゃないみたいだ。
わたしは意気揚々と好きな歌をうたい。いつの間にか周りの注目を集めていた。
それ以来、わたしはカナリア飴の常連になった。
好きな歌をうたって周囲にも喜ばれる。
それが快感だった。
ある日、いつものように駄菓子屋に行くと空き地になっていた。
わたしはビックリして道行く人を捕まえては、ここに駄菓子屋さんありましたよねと聞いたが、答えは同じ。
前から空き地だったと……。
カナリア飴は残り二個。
その時、駄菓子屋のおばさんの言葉を思いだした。
カナリアは一日に一個
二個いっぺんに食べたらどうなるんだろう?
だが、貴重なカナリア飴である。わたしはおばさんの言葉を守って一個頬張る。
あぁ、明日でこの声ともお別れか。
なんだか泣けてきて、泣きながら歌をうたってた。
最後の日、自分が無意識におばさんの言葉を守っていたことに笑い、最後の一個を食べて楽しい曲をうたって終えた。
次の日、普通にわたしは歌をうたっていた。下手でもいい歌が好きだから、うたっていた。
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