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勢い込んで電車に揺られ、彼女の家まで向かう。 案外あいつの家は、駅から遠い。 でもそんな道さえも、懐かしい想い出で溢れている。 あいつが、何故か入りたがった、女性が接客をするパブは、今は違う名前の店に変わっていた。 ラストチャンスと思って仕掛けたホテルは、新しいマンション建設中の白い壁に覆われている。 あの時、抱いた真っ赤な感情の行き場がないまま、白い鉄の壁をなぞってゆく。 他の誰かのものになっているかもと思ったら、嫉妬がふつふつと湧いた夜を想い出す。 未だにまっさらなままの左手に、俺は迷わず手を伸ばし、 「俺ともう一回付き合って、俺が戻るまで、ずっと待ってて欲しい」 なんてとんでもない要求を突き出しそうになった自分を、抑え込んで、 キスフレというフレーズで、片づけて、独占欲を簡易的に満たそうとした。
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