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「これは受け取っとくよ。
一番活用してくれそうな人にあげようと思う。ありがとうクレア。お休み」
クレアは、ほんの少し悲しげな表情を浮かべて頭を下げた。
扉を閉めて、窓際のテーブルの上に置いた。貰った「GE-00X」の藍色の箱が、東京の街の灯りに反射して、星屑を集めたブラックボックスのように見えた。
綺麗な箱の中に、俺が彼女と離れた後、俺の人生を注いだといっても過言じゃないもの全部が詰まってる。
誰かにあげるのだとしたら、それは、上手に使いこなせる人ではなく、
俺がどんな風に今まで過ごしてきたのかを、一番知って欲しい女なのかもしれない。
先ほどまでは瞼を閉じただけで眠気がやってきたというのに、眠れそうもなかった。
今夜で最後にしようと思っていた。今夜で彼女を忘れようと思った。
だったら、残された今日のあと数時間、ラストチャンスを使ってギリギリまで粘ってみるのもありかも知れない。
ブルーの箱を掴んだ。
プラスティックで出来た金色のプレートの中央に、気持ちがぶれないように彼女の名前を記す。
これでもう逃げ場はない。
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