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この時点で、金髪と【委員長】の位置関係は、花の添えてある崖の縁に金髪。
2メートル離れた位置に【委員長】だ。
「……。あ、あ、あ」
「あ、じゃねーよ。気分悪すぎ、…って、顔が真っ青じゃねーか?おい、委員長、だい」
じょうぶ?の声は、最後まで聞かれることがなかった。
「ぐっ、なんだよ!?誰だよ、後ろから口を押さえるなんて、変態かっ!委員長、見てねーでたすけろよ!! 」
【委員長】の目の前で、金髪が。
叫ぶ。
叫ぶ、叫ぶ。
叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
しかし、【委員長】が行動に移ることはなかった。
彼女の瞳に映っていたのは、崖の底から伸びた青白い右手が、金髪の口を押さえてる姿だったから。
尋常じゃない【委員長】の様子で、金髪の理性がパニックから戻り、本来なら人がいるはずのない場所で自分が口を押さえられてる事実に気づく。
「…おい、まさか、この手って、いや、やめてっ!!」
気づけばよかったのか。
気づかなければよかったのか。
金髪の悲鳴を皮切りに、崖の底から、無数の手と足が異様な長さで金髪目掛けて殺到し始めた。
「うぐっ、いや、やめて、いたいっ!!なんで?あ、だめ、って、ぎゃあああああ、いやあ、あ、あああああ!?は、あ、あたし、ぐう、あは、ひゃは、うげっ、ぎぎぎぎぎぎ、ぐ」
金髪を中心に、伸びた手足が集まり重なり。
【委員長】の目の前で、人の手足だけで構成された繭が出来上がった。
「ぎぃぃぃやぁぁぁあああああぁぁあぁぁああ!っあああああっ…」
いつ果てるともない金髪の断末魔の悲鳴が、安らぐことのない終わりを迎えた頃。
…ぷっ。
その繭から、女性の胴体が吐き出された。
裸のままではあるが、それが元金髪であることは、間違いようのない事実。
【委員長】がその場で失禁したことは、この際問題にはならない。
しばらくすると。
繭がモゾモゾと蠢きはじめた。
何かが生まれる。
非常識な出来事に思考を壊された【委員長】の目の前で、手足で出来た繭は、その形をゆっくりと変えていった。
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