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それは、【空を泳ぐ鮫】。
目の前の手足は、複雑に蠢き、変形し、その形を、【鮫】という形に進化させた。
その形をとった今では、【委員長】の回りをまるで海の中を遊泳する鮫のごとく、空中を優雅に泳いでいる。
そして、その尾びれには。
金髪がクラスメイトにずっと自慢していた高価な指輪が光る左腕。
その左腕が。
【委員長】に向けて。
『おいで、おいで』
と、手招きをしていた。
†††††††
とある精神病院の個室。
うっすらとつけられたTVから、ニュースの速報が流されている。
『茨城県○○市の崖で、若い女性の遺体が2つ見つかりました。どちらも、首、両腕、両足を根本から動物に食い千切られたような痕跡が見られた為、警察は事故と事件の両方から調べを進め…』
個室の主は、ただただ笑うばかり。
「ひゃははははは、ひゃははははは、ひゃははははは、ひゃははははは、ひ、ひ、ひ、ひ、ひゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!は?さ、さ、さささささめ?」
いつからだろう。
人の思考を失った、個室の主が不審に思う。
どこからこの【さめ】ははいりこんだんだろう?
いつのまにか、個室の中に空を泳ぐ鮫が入り込んでいる。
「うであしうであしうであしうであしうであしうであしうであしうであしうであしうであしうであし!!さめ、うであし!ひゃはははははっ!?はっ、瑠美(るみ)!?」
腕と足で構成された、空を泳ぐ鮫の中に、我が子の腕を見つける彼女。
「瑠美、瑠美、瑠美、瑠美瑠美瑠美瑠美!!」
ベッドから転がるように鮫に飛びかかる彼女。
無意識に、無表情に、機械的に、【鮫】は彼女を飲み込み。
ぷっ。
その脱け殻を吐き出すと。
まるで何事もなかったように、消え去った。
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