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本当に何も知らされていないのか、出張から戻った部長は今までとなんら変わりはなかった。
部長に対する神崎君の態度も変わりなく、むしろ機嫌が良い。と言っても過言ではない程。
事件の次の日だけ、彼の言う通りに会社を休んだことが功を奏したのかもしれないけれど
「飯山さんがいてくれると助かるよね」
何かと私を心配する彼女をやたらと褒めちぎり、しまいには「これからもよろしくね」なんてお願いまでした彼は
「神崎さん。最近、いつも以上に笑顔がキラキラしてて気持ち悪いんですけど。何か企んでます?」
社内での評判を落とすことはなかったものの、眉間に皺を寄せた飯山さんにあらぬ疑いをかけられていた。
「……さぁ」
心当たりのある私は、彼女との内緒話を曖昧に答え、「これから週末には2人でご飯食べに行きましょうね」という申し出を快諾する。
「……」
自分でお願いしたこととはいえ、キャッキャとはしゃぐ飯山さんの後ろの方で少しだけ複雑な顔をする彼には、それはそれは残念な申し出だったことだろう。
と、思った。
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