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――――…数ヵ月後
「雛森さん、知ってます?部長の転勤の話」
飯山さんからそのことを尋ねられたのは、恒例になった、週末の食事会でのこと。
乾課長に教えてもらったという京料理のお店で、窓から見える桜とおぼろ月を一緒に愛でていた時だった。
「……いえ」
滑らかで濃厚な胡麻豆腐に入れたスプーンを止め、顔を上げる。
「あっ。違いますよ?奥さんご乱心事件がバレた訳ではないみたいです」
『まさか……』という気持ちが顔に出ていたのだろうか。
旬の若竹の天ぷらを慌てて飲み込んだ飯山さんは、自分の顔の前で大きく手を振り、私の不安を否定した。
「私も噂で聞いただけなんですけど」
そんな前置きをし、話し始めた彼女の言葉。
私の部屋に度々訪れるようになっていた神崎くんからも聞いたことのない内容に、思わず口を噤んだ。
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