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「部長の奥さんのご両親て、他県にお二人だけで住まわれてるんですって。ご高齢で、身体もだいぶ弱くなってきたらしいんです」
お箸を唇にあて、聞いたことを正確に伝えようとする飯山さんは、話すペースをいつもよりゆっくりとさせた。
「ほら、部長の奥さんて介護職してるじゃないですか。自分で面倒みてあげたいって気持ちがあるんでしょうね。奥さんてひとりっ子だし、前々から同居の話は出てたみたいですよ」
部長からは何ひとつ知らされていなかった事情。
もしかして、それも私と別れる理由のひとつだったのではないか。
「こっちの家に呼ぶよりは慣れ親しんだ土地で世話してあげたいし、自分は奥さんを支えてあげたいから。ってのが理由らしいです」
「……」
どちらにしても
私は選ばれなかった。
という結果に、変わりはないけれど。
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