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空に浮かんだ三日月。
薄雲の隙間からその姿を現し、柔らかく光る。
街の騒音と同僚達の笑い声。
足元に見えない線を引き、この世界を私達だけのものにする。
「ごめんな」
部長の声しか聞こえない。
「あんなやり方でも、お前が喜んでくれるならいいと思ってた」
部長の言葉しか聞こえない。
「お前が望むものを与えてやりたいと思ってた」
部長の姿しか見えない。
「……」
返す言葉などなく、ただ部長を見上げ、その言葉を受け止めた。
私を見下ろす瞳は優しく、真っ直ぐ見つめる視線に、嘘も偽りも感じることはない。
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