第一話

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「んっ………あれ…?」 「あぁ、起きたね。大丈夫かい?」 暫くすると黒縁眼鏡君が目を覚ました。 ゆっくりと瞼を開けて自分が今何処にいるのかを確認するように首を左右に動かす。 しかしやはり眼鏡がないと見えないのか、目を腕で擦って眼鏡を探すために体を起こした。 「眼鏡…」 彼がキョロキョロと辺りを伺うので俺は黙って眼鏡を差し出す。 「あっどうも」 彼は礼を言いながら眼鏡を受け取り、眼鏡を掛ける。 「いやぁなんかすいま―――――」 黒縁眼鏡君が頭を掻きながら俺の方に顔を向ける。 目が合った瞬間、彼の動きがまるでネジが切れたかのようにピタッと止まった。 「………え?」 彼が表情を笑顔で固めたままボソッと呟いた。 そのままゆっくりと頭を掻いていた手で俺を指差してくる。 「しら、ぬい…雪弥…?」 「うん」 黒縁眼鏡君が俺の名前をたどたどしく呼んだので、俺は頭にハテナを浮かべながら返事をする。 すると彼の額からダラダラと汗が流れてきた。 「おおおおおおお、おれ、不知火雪弥と、喋ってる……」 彼の表情から笑顔は消え、慌てているような驚いているような挙動不審な態度になった。 「ユキ、起きたのか?」 黒縁眼鏡君が起きたことに気付いたアキが隣から顔を覗かせる。 「も、杜ノ塚、秋彦までぇ…!!」 「あ?さっきまで一緒だったろうが」 「喋ってるぅううううう!!」 そう叫ぶと彼は鼻血を出しながら後ろへと倒れてしまった。 「…なんだこいつ」 アキが呟いた言葉には俺でも同意した。
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