第一話

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アキは格好良い分類に入る、のだと思う。 光をも吸収していそうな黒髪に切れ長の目。 左目にはトレードマークとも言える泣きボクロがある。 まだ17歳だというのに大人顔負けの逞しく引き締まった体。 男なら誰もが憧れる体型だろう。 おかげで彼に密かに思いを寄せる生徒も少なくはない。 今日もこうしてクラスメイトがアキを見てキャッキャとはしゃいでいた。 だけどアキには親衛隊というものがいない。 こんなにも整った顔立ちならここの生徒は放ってはおかないだろう。 勿論、アキにも親衛隊は出来ていた。 だが直ぐに解散してしまったのだ。 アキが許さなかったのだ。 理由を聞いても「面倒くせぇだろ」としか答えなかった。 アキらしいと言えばアキらしい答えだった。 だが俺は知っている。 アキは面倒事が嫌いではない。 寧ろ自分から首を突っ込むタイプだ。 そうでもなかったら俺とは一緒にいてくれないだろう。 自分で言うのもなんだが俺は面倒事の塊だ、と思う。 さすがの俺でもそう思う。 周りの人間とこんなにも違うのだから。 俺はじっと目の前のアキを見つめた。 アキは出会ってから今まで俺から離れる事はなかった。 俺が何かをしでかしても、意味がわからなくても、それでも、尚。 不思議でたまらない。 「…何見てんだよ、ユキ」 「ん?あぁいや、今日もアキは格好良いなと思ってね」 「ったく…機嫌とってんじゃねぇぞコラ」 「そんなことないよコラ」 俺は優しいアキに、甘えている。 彼が何を考えているかも分からず、ただ甘えてしまっている。
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