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生徒会長に連れてこられたのは、ありがちな体育館の裏だった。
大きな体育館の陰になっていつも暗く、じめっとしている。
この学園にもこんな所があったのかと、新たな発見に心躍る。
だが心など踊っている場合ではなく、生徒会長は乱暴に俺を壁に押し付けられると、キッと俺の事を睨んできた。
何故睨まれてるかなんて見当もつかない。
会長の隣では、眼鏡の彼がニヤニヤと笑っている。
こういうのが意地の悪い笑顔、と言うのだなと思った。
「お前、何故ここに連れてこられたかわかってるか」
今の季節は6月。
気温は段々と上昇し、たまに汗が滲む事もある。
梅雨の季節でもあるため、湿気が増え、じめっとした暑さで憂鬱になる時期だ。
だが今日はそんな事はない。
過ごしやすい気温で吹く風が心地よく肌を撫でる。
緑で彩られた木々たちも、風に揺れてザワザワと木の葉がぶつかり合う音を立てていた。
俺はこの音が好きだ。
耳によく馴染む音だと思う。
つまりは落ち着くのだ。
「…おい、聞いてるのか?…おい!」
「……ん?あぁすみません、ええと、会長。木の葉の音が気持ちよくて」
「…チッ、まぁいい。今日ここに連れてこられた――」
「…………」
「…だから!目を閉じてしっかり木の葉の音を聴いてるんじゃない!俺の話を聞け!!」
心地よい気温によって寝てしまいたいと思った俺は、静かに目を閉じ木の葉の音の耳を傾けていた。
すると会長に怒鳴られ、俺の睡眠行動は遮られてしまう。
確かにここで寝るのもおかしいと思うし、会長達は俺に用があるからこうして此処に連れてきたわけだから、俺が悪いと感じ、素直に「すみません」と謝る。
謝ったはいいがやはり機嫌を損ねたのか、会長は先程よりも鋭利な視線を寄越していた。
アキ以外の人間としっかり話すのは久しぶりだから、勝手がよくわからない。
あぁ、まずは話をちゃんと聞こう。情報を取り入れるんだ。
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