第一話

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「絢也、そろそろいいでしょう」 「あぁ…十分だな」 「どうです?これにこりたらこれ以上紘夢には近付かな―――」 会長が後ろに下がり眼鏡の彼が俺に近付く。 俺が倒れたまま動かない事に気を良くしたのか、軽く足で小突いてきた。 それでも反応がないため、調子に乗ったのか足を思いきり振り上げる。 俺はそれを片手で受け止めた。 「満足しましたか?」 俺は顔を上げて笑顔を崩さずに問う。 別に怒ってもいないし怯えてもいない、という事を伝えたかったのだが、駄目だったのか会長も眼鏡の彼も目を見開いたまま俺を見る。 絶対に動かないと思っていた相手が突然動き出し、しかも喰らわせるはずだった蹴りを受け止められてしまい戸惑った眼鏡の彼は、そのまま尻餅をついてしまった。 俺はそんな事も気にせずゆっくりと起き上がり、服に付いた砂を払い、身体が動くかどうか確認する。 どこも異常がない事が確認できたら、驚いて固まっている会長に目をやる。 俺は彼を安心させるつもりで笑顔を浮かべる。 彼に一歩近付くと、彼もまた一歩下がる。 だが彼が下がるよりも、俺が早く近付き、既に目の前には彼の端麗な顔があった。 「気を付けてください会長、仮にも生徒会長という役職についているんですから…俺じゃなかったら危ないですよ」 「なっ…!?お前…何故っ…!?」 「あぁ、すみません」 「俺、人より感じにくいんです」
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